むかし

幼い自分が、社会人という呪いの札を貼り付けられたばかりの頃


自分は『世界でいちばんダメで頭がおかしい人間』だと思っていた

それは当たり前の事だった

それは誰にも言えない事だった

こんな変な人間はどこにもいない

誰にも理解される事ではない

というか、考えた事もなかった(伝えようとか、理解されるとか、発想がなかった)


たった一人、深くて暗い重い闇の中にいることに気づいていない

訳もわからずに、ただただ もがき続ける




魂の脱け殻がらがさ迷う本屋で

一冊の本を見つけた




衝撃だった




自分の事が書いてある




表に出すべきではない深い心の闇の中汚物が

公の本として売られていた衝撃

理解される事の衝撃

自分とは全く別の次元にいる人々の存在…

衝撃だった






闇の中の汚物が理解される事はとても嬉しく、それまで感じた事のない感動で泣いた




でも、

その本に救いは無かった


何で汚物の中にいるのか、どうして辛いのか、どうして出られないのか
心の底からよく理解できたが

抜け出す術は絶望的だった



そしてまた、有り余る力で ただもがき続けた

現状に溺れ、流され、本能的にもがき続けた

未来に希望など持てるはずもなく

若いうちに死にたいと思った








あれから途方もない歳月が流れた

死ななかった

それが良かったのか悪かったのか分からない

今となっては どうでもいい

ただ もがき疲れた

つかれた




手も足も動きがとまれば

ぶくぶくと、汚泥の中のみこまれ

やがて息き絶えるのだろう



でも、まだ残念ながら そこには到達していない

この手は、こうやってまた文字を打っている


息が絶えるその瞬間まで、もがき続けるのだろう